安全管理者必読|職場における非常時応急処置の実践マニュアル

「救急箱は用意してあるけれど、本当に必要なものが揃っているんだろうか…」
「応急処置の訓練はしているが、実際の事故の時に冷静に対応できるだろうか…」

製造業や建設業の現場で安全管理を担当する方々から、よくこうした声を聞きます。

特に、近年の働き方改革による人員配置の変更や、新入社員の増加により、安全管理の重要性は一層高まっています。

本記事では、現場で本当に役立つ応急処置の知識と、確実に実践できる体制づくりについて、具体的な事例とともにご紹介します。

是非最後まで読み通してみてください!

目次

1. 応急処置の基本:生命を守る「10分の壁」

重大な事故が発生してから10分が、生命を左右する重要な時間とされています。

特に、大量出血や意識障害を伴う事故の場合、この10分間の対応が傷病者の予後を大きく左右します。

まず重要なのは、事故発生時の冷静な観察です。
傷病者に対する最初の観察では、意識の状態を確認します。

大きな声で呼びかけ、反応の有無を確認してください。
意識がある場合は、本人から症状を聞き出すことができますが、意識がない、もしくは朦朧としている場合は、直ちに救急車を要請する必要があります。

次に、呼吸の確認を行います。

胸の動きを10秒間観察し、普段通りの呼吸があるかどうかを見極めます。
同時に、顔色や皮膚の状態も重要な判断材料となります。

冷や汗が出ていたり、顔色が蒼白になっていたりする場合は、ショック状態の可能性があります。

これらの観察結果をもとに、処置の優先順位を判断します。
生命に関わる症状、特に以下の場合は、躊躇なく救急車を要請してください

  • 意識がない、または著しく低下している
  • 呼吸が弱い、または不規則
  • 大量の出血がある
  • 重度のやけどを負っている
  • 高所からの転落事故

2. 実践的な救急用品の準備と管理

応急処置の成否は、適切な救急用品の準備にかかっています。
しかし、ただ物を揃えるだけでは不十分です。

現場の特性に応じた配置と、定期的な管理が重要です。

作業現場での救急用品の配置

作業現場には、すぐに使える基本的な救急用品を配置します。

特に重要なのは消毒液と止血用品です。

消毒液は、イソジン液と消毒用エタノールの両方を用意しましょう。
イソジン液は確実な殺菌効果が期待できますが、アレルギーを持つ人もいるため、エタノールも併せて準備が必要です。

包帯類は、用途に応じて複数のサイズを用意します。

特に、伸縮包帯は5cm幅と7.5cm幅の2種類があると便利です。
また、三角巾は骨折時の固定など、様々な用途に使えるため、最低でも3枚は用意しておきましょう。

使い捨て手袋は、血液や体液との接触を防ぐために不可欠です。
ニトリル製の手袋を推奨します。

これはラテックスアレルギーの可能性を考慮してのことです。

救護室の設置と備品管理

救護室には、より専門的な医療機器や備品を配置します。

自動血圧計やパルスオキシメーターは、傷病者の状態を客観的に評価するのに役立ちます。

また、担架は折りたたみ式のものを選び、収納スペースを効率的に使うことをお勧めします。

特に注意したいのが、救急用品の使用期限管理です。

以下のような管理システムの構築を推奨します

  1. 救急用品管理台帳の作成
    • 品目ごとの在庫数
    • 使用期限
    • 点検日と点検者
    • 補充履歴
  2. 月1回の定期点検の実施
    • 在庫数の確認
    • 使用期限のチェック
    • 破損・劣化の有無確認
    • 清潔度の確認
  3. 使用後の補充ルール
    • 使用報告書の提出
    • 24時間以内の補充
    • 補充者のチェック
    • 在庫管理者への報告

3. 現場で多い怪我への具体的な対応

切創・裂創(切り傷)への対応

切り傷は現場で最も頻繁に発生する怪我の一つです。
対応の基本は止血と感染防止です。

まず、清潔なガーゼや布で傷口を直接圧迫します。
この時、強すぎる圧迫は組織を傷めるため避けましょう。

出血が落ち着いたら、流水での洗浄を行います。
水道水で構いませんが、3分程度かけてしっかりと洗い流すことが重要です。

次に、消毒を行います。
ただし、大きな裂創の場合は、医療機関での縫合が必要になる可能性があるため、安易な消毒は避け、清潔なガーゼで保護するにとどめましょう。

やけどへの対応

やけどへの初期対応は、冷却が最も重要です。
ただし、やり方を間違えると症状を悪化させる可能性があります。

冷却は、必ず流水で行います。
水圧が強すぎると痛みを伴い、組織を傷めることがあるため、弱めの水流を使用します。

冷却時間は最低20分、できれば30分程度継続します。氷や氷水は使用せず、13-15度程度のやや冷たい水を使用するのが理想的です。

衣服を着たままやけどした場合、無理に脱がそうとせず、衣服の上から冷却します。

衣服が身体に貼りついている場合は、特に注意が必要です。この場合は、医療機関での処置を待つべきでしょう。

打撲・捻挫への対応

打撲や捻挫は、一見軽傷に見えても、内部で重大な損傷が起きている可能性があります。
特に、頭部や腹部の打撲は要注意です。

まず、患部の安静を保ちます。
次に、氷嚢などで冷却しますが、直接皮膚に当てるのは避け、タオルなどを間に挟みます。

圧迫は、弾性包帯を使用して行いますが、強すぎる圧迫は血行障害を起こす可能性があるため注意が必要です。

指先や足先の色が変わったり、しびれを感じたりする場合は、すぐに圧迫を緩めましょう。

おわりに

応急処置は、知識があっても実践できなければ意味がありません。

定期的な訓練と、実際の事故事例に基づく検証を重ねることで、確実な対応力を身につけることができます。

また、最新の応急処置方法は、医学の進歩とともに変更されることもあります。

年に1回は専門家による講習を受けるなど、知識のアップデートも忘れずに行いましょう。

現場の安全は、一人ひとりの意識と適切な準備があって初めて確保されます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

HUB.代表
某株式会社(製造請負業)安全衛生担当責任者

安全とは無縁の環境から安全レベルトップまで職場整備を行い
現在15年以上にわたり無災害記録を継続中

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