建設業における死亡災害の約4割を占める「墜落・転落」事故。
2024年も複数の重大事故が報告されており、その多くが基本的な安全対策の不備によるものでした。
本マニュアルでは、現場で即実践できる具体的な対策と、事故事例から学ぶ教訓を交えながら、安全管理のポイントを解説します。
最近の事故事例から学ぶ
2023年の重大事故分析によると以下のような事実があります。
- 事故の70%が作業開始から1時間以内に発生
- 90%以上が安全帯の不使用または誤使用が原因
- 50%以上が経験10年以上のベテラン作業員
1. 高所作業の基礎知識と法的要件

改正労働安全衛生規則のポイント
特に注目すべき変更点をご紹介しておきます。
- フルハーネス型墜落制止用器具の使用義務化(2m以上の高所作業)
- 特別教育の実施義務(作業者全員)
- 6.75m以上の高所での作業における措置の強化
事業者の法的責任と義務
作業環境の整備
作業床の設置
作業内容に応じた十分な広さの確保が必要です。
特に複数人での作業時は、一人あたり最低1m²のスペースを確保することを推奨。
また、資材置き場との明確な区分けも重要です。
実施例
- 作業範囲を黄色テープでマーキング
- 作業者の動線を考慮したレイアウト
- 資材置き場は青テープで区分け
区分けの種類として参考にしてください。
・一時置き場:点線による区画
・実線による区画
・二重線による区画
防網の設置
従来の「投下防止網」から「安全防網」への意識改革が必要です。
防網の設置高さは、作業床から最大で10m以内とし、複数層での設置を推奨します。
網の重なりは45cm以上確保
・支柱との接続部は2重化
・日常点検で網の張り具合をチェック
保護具の管理
安全帯・フルハーネスの選定
作業内容と作業者の体格に合わせた選定が重要です。
特に夏場は蒸れにくい素材の選択も検討してください。
選定基準
- JIS規格品であること
- サイズ調整が容易な構造
- 必要に応じて適切な長さのランヤード
定期点検の実施
点検頻度と項目を明確化し、記録を残すことが重要です。
- 外観検査(傷、摩耗、変形)
- 機能検査(バックル、フック)
- 耐久性検査(ベルトの強度)
- 記録の保管(3年間)
教育訓練の実施
法定教育
単なる座学ではなく、実践的な訓練を含めることが効果的です。
現場での具体的な安全対策

作業前の確認事項
気象条件のチェック
①風速:10m/s以上で作業中止
②雨天:強度に応じて作業制限
③気温:35℃以上は休憩時間の増加
④視界:50m以下での作業制限
作業場所の整理整頓

作業中の安全確保
- 監視体制の確立 → 「セーフティーコール」の導入
・作業開始時の声かけ ・30分ごとの安全確認 ・位置移動時の報告 - 「救助3原則」の徹底
通報:即座に責任者へ連絡 ・救助:2人1組での救助実施 ・搬送:救急車の誘導体制
作業後の点検・確認
- 設備の点検 → 「夕暮れ点検」の実施
- 損傷箇所のマーキング
- 要補修箇所の写真撮影
- 翌日の作業範囲の確認
- 記録の保管 → 「5W1H」での記録
- 作業内容と時間
- 使用した保護具
- 気象条件
- 作業者名
- 特記事項
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フルハーネス型安全帯
親綱
軽量フック付きランヤード
まとめ
従来の「規則を守る」という受動的な安全管理から、「安全を作り出す」という能動的な安全管理へ。
安全は「与えられるもの」ではなく、「みんなで作り上げるもの」です。
この意識を現場全体で共有し、より安全な作業環境を実現しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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